給与計算は、毎月従業員に対して給与を支払うための重要な作業です。給与計算は誰でもできると思われがちですが、労働法、社会保険関係各法、所得税法などの知識を把握していなければ、完璧に行うことはできない、意外と煩雑で落とし穴のたくさんある作業なのです。「日割計算が間違っているのでは・・・?」、「社会保険料の控除金額が多いのでは・・・?」、「残業代が支払われていないのはどうして・・・?」などと従業員から指摘をうけることなくスムーズに作業を進めるために給与計算の基本についてこれだけは抑えておきましょう。


1 毎月の給与計算(月給者の場合)

 
Ⅰ まず、給与計算を行う前に以下の書類を準備しましょう。

① 就業規則
② 賃金規程
③ 賃金控除等の労使協定
④ 健康保険・厚生年金保険料額表
⑤ 源泉徴収税額表

Ⅱ 給与計算を以下の流れで行います。

① 勤怠データの確認

② 変動賃金データの確認

③ 固定賃金データの確認

④ 欠勤控除、遅早控除の確認

⑤ 給与支給額合計の確認

⑥ 健康保険料、厚生年金保険料の確認

⑦ 雇用保険料の確認

⑧ 所得税の確認

⑨ 住民税の確認

⑩ その他控除データの確認

⑪ 差引支給額の確認

⑫ 給与振込の場合は各個人の振込先データの確認

⑬ 金融機関へ給与振込データの持込(給与振込の場合)


 ①勤怠データの確認
各従業員の勤怠データの確認は出勤簿やタイムカードで行います。これにより勤務日数、有給日数、残業時間、欠勤日数や遅刻などの勤務状況を把握します。

 ②変動的賃金データの確認
変動的賃金は、営業手当や精皆勤手当など毎月の支払が確実ではなく業績や勤務成績で変動がある賃金です。会社にどんな変動賃金項目があるのか賃金規程で確認しましょう。
また、労働者が所定労働時間を超えて時間外労働をしたときは、時間外労働手当を支給します。時間外労働の計算方法は賃金規程で確認します。

 ③固定的賃金データの確認
固定賃金に含まれるのは、基本給、通勤手当、家族手当、住宅手当、役職手当、などです。会社にどんな固定賃金項目があるのか賃金規程で確認しましょう。
固定的賃金は、例えば昇給で基本給がアップしたなどの変動があった場合に注意が必要です。

 ④欠勤控除、遅早控除の確認
有給休暇制度などを利用せず、勝手に欠勤や遅刻をした従業員に対し給与から欠勤分や遅刻した分の給与を差し引きます。控除欄で差し引くのではないのでご注意下さい。差し引く給与額の計算方法は賃金規程で確認しましょう。この場合の差し引かれる給与は、罰金などではなく、日給月給制であれば当然差し引くことの出来る給与です。働いてなければその分の給与は出さなくていいのです。

 ⑤給与支給額の合計
一通りの項目金額が決定したら給与支給額合計を算出します。②+③-④の額がこちらに計上されます。

 ⑥健康保険料、厚生年金保険料の確認
 健康保険料は、固定的賃金に変動があり月額変更手続きをした後や労働者が40歳となり介護保険料の支払が発生した後、毎年9月の保険料見直し後、法改正で保険料率が変更された後に変更しますのでそのつど確認しましょう。
 また、政府管掌健康保険と健康保険組合とでは、料率が異なります。ご自身の会社がどちらの健康保険制度に加入しているか就業規則などで確認します。
 厚生年金保険料は、固定的賃金に変動があり月額変更手続きをした後や、毎年9月の料率、額変更後に確認するデータです。厚生年金保険の保険料率は、その会社が厚生年金基金に加入している場合は、料率が異なりますのでご注意下さい。
政府管掌の健康保険料・厚生年金保険料額表(一般)はこちら

 ⑦雇用保険料の確認
 雇用保険料は、給与支給額合計に本人負担の保険率をかけた額となります。業種によって計算の基になる雇用保険率が違います。
雇用保険率はこちら

 ⑧所得税の確認
課税対象額を源泉徴収税額に照らし合わせて算出します。課税対象額は、給与支給額合計から健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、非課税通勤手当を差し引いた額です。
 また、扶養人数によって、所得税額が変わってきますので、税法上の扶養人数に変更がある場合には労働者に扶養控除等(異動)申告書を訂正してもらいます。健康保険上の扶養者と適用範囲が違いますので、注意が必要です。

 ⑨住民税の確認
 会社が従業員の給与から本人の住民税を天引きして、他の労働者分とまとめて市区町村に支払う(特別徴収といいます)場合、給与から控除します。毎年6月に住民税の額が切り替わるときに特に中が必要になります。一般的に、6月と7月以降の住民税額は違うことが多いので7月の住民税額も注意しましょう。また、入社後、従業員が特別徴収を希望する場合は、既定の手続きを行いそのとき住民税額を確認します。ちなみに、従業員本人が直接市区町村に住民税を納める場合を普通徴収といいます。

 ⑩その他控除の確認
 食事代や、物品購入代金など会社独自で賃金から天引きしている金額データの確認です。事前に労使協定で賃金控除協定を結んだものしか控除できないので注意しましょう。(詳しくは、賃金5原則をご覧下さい。)

 ⑪差引支給額の確認
 給与支給額合計からそれぞれの控除項目を差し引きます。これで、従業員の差引支給額いいかえれば手取額が確定します。

 ⑫給与振込の場合は各従業員の振込先の確認
 給与振込の場合、従業員が指定した振込先を確認します。結婚などで従業員の振込先の情報に変動がある場合は注意しましょう。

 ⑬金融機関へ給与振込データの持込(給与振込の場合)
会社の口座から従業員の給与を指定日に一斉に振込できるよう金融機関に依頼する場合は、事前にデータを金融機関に渡す必要があります。各金融機関によってデータの持込期限が違いますので、ご利用の金融機関に確認しましょう。

Ⅲ 給与明細書
給与計算が終わったら以下のような内容の明細書を給与支払日従業員に渡します。現金で支給する場合は、従業員から受取の確認印をもらいましょう。



   
2 一歩踏み込んで・・・賃金支払5原則

 労働基準法24条では、労働者の生活が保障されるよう、賃金が確実にその労働者に支払われるように、通常時での賃金支払いの5原則が規定されています。
 賃金支払いの5原則とは、以下の5つです。

 ①通貨払いの原則

 賃金の支払いは、原則として通貨で行われなければ労働基準法違反となります。但し、従業員の同意を得た場合は、従業員が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者名義の預金または貯金口座への振込みによることができます。

 ②直接払いの原則

 賃金は、労働者に直接支払わなければ労働基準法違反となります。賃金を、労働者の使者(妻や子)に払うことは可能ですが、代理人に支払うことはできません。代理受領された賃金が着服された場合、使用者は二重支払いの請求に応ずる必要がでてきます。

 ③全額払いの原則

 賃金は、原則的に、法律上別段の定めがある場合や労使協定で賃金控除協定を締結している場合以外は、控除することはできません。使用者が有する債権との相殺は原則できません。法律上別段の定めがある場合とは、社会保険料や所得税等の公租公課です。賃金控除協定を必要とするものとしては、財形貯蓄、社内預金等の天引き貯金、親睦会費、社宅料、物品購入代金、食事代等です。

 ④毎月払いの原則

 使用者は、賃金を「毎月1回以上・・・支払わなければならない」とされています。「毎月」とは、暦にしたがうものと解されますので、毎月1日から月末までの間に少なくとも1回は賃金を支払わなければなりません。

 ⑤一定期日払いの原則

 ここでいう「一定期日」とは、期日が特定されるとともに、その期間が周期的に到来するものです。例えば、月給制の場合で、「毎月10日」や「末日」などです。ただし、所定期日が休日にあたる場合には、その支払日を繰り上げる、または繰り下げることを定めることは、一定期日払い違反にはなりません。なお、臨時に支払われる賃金、賞与など臨時の賃金等については、この一定期日払いの原則は適用されません。


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